こんにちは。看護師のいいだです。
小さなお子さんをお持ちのお母さんが、「子育てって目が離せなくって、思っていた以上に大変です」そう言われ出すのが生後5ヶ月ごろ。
あやすとニコニコ笑ったり可愛い表情が出てくる反面、何でも口に持っていってしまう、寝返りなどはじめていろんな事故が気になる。こんなことも影響しているようにおもいます。
実際に、乳幼児の死亡事故の原因の上位に上がるのが「不慮の事故」と呼ばれるもの。
この中でも「誤飲」はその原因の8割を占め、ものをつかめるようになる生後5ヶ月頃から、たっちやあんよが始まる1歳台が特に多くなる事故です。
今回は、誤飲がどこの家庭でも起こり得るものとして知っていただき、小さなお子さんをお持ちの方に注意しておいてほしいこと、そして万が一飲み込んでしまった時の対応をお話ししていきたいと思います。
目次
1. 赤ちゃんの誤飲、原因は?
誤飲は普通の食べ物じゃないもの、例えばボタン電池、洗剤などを飲み込んでしまた場合をいいます。
言葉は似ていますが「誤嚥」と言われるもは飲み込んだものが誤って気道に入ってしまったことで、肺炎を起こすこともあります。
また同じような誤って口に入れる事故では、飲み込めず気管を塞いでしまうと「窒息」につながるということも起きます。
どれも、考えただけで恐ろしいのですが、私が小児科で働いていた時に実際に運ばれてきた子供のあるケースをご紹介します。
事例)3歳男の子、灰皿とジュースを間違えて誤飲
お友達のお家にあそびに行っていた3歳児の家族。
ベランダでシャボン玉をして遊んでいた子供の一人が、ベランダの隅に置いてあったジュースの缶をみつけます。
ちょっと飲んでみよう。そんな好奇心で口に持っていったのでしょうか。
実はこの空き缶の中に入っていたのは、友人お父さんガ吸っていたタバコの吸殻だったのです。
この家では、タバコを吸うのはベランダと決めていて、飲み終わった空き缶に水を張り、それを吸殻入れにしていました。
でも今は禁煙家庭も多く、タバコの存在を知らない子供も少なくありませんね。
空き缶だけをみたら、ジュースの飲みかけにも見えます。ましてや自分の家ではない場所で、それが灰皿にされているなんて想像もつきません。
事故はこうやって日常のどこでも起こり得るものです。
タバコに含まれるニコチンは水に溶けやすく、溶けると毒性が上がり、とても危険です。
この時は口をつけただけで済んだので大事故にはなりませんでしたが、一歩間違えたら命の危険もあった事例でした。
これを読まれた皆さん、どう感じられましたか?
「人ごとではないな」そう気づかれたのではないでしょうか。
ちょっと難しいのですが、医療の中で「リスクマネジメント」という言葉が使われることがあります。
危険や危機を事前に予測して事故を防ぐという考え方です。また、何かあった時にも的確に動いて被害を最小限に抑えるという働きもあります。
悲しいですが、子どもの事故の7割は、大人の不注意から起こるとも言われます。
乳幼児の死亡統計の上位に「不慮の事故」が入っています。病気だけではなく、ほんの不注意から起きた小さな事故で命に関わることがある…
ごめんね、と誤って済む出来事ではないことが、小さな子供を抱えていると起きるということを改めて知っておかないといけないのだということなのだと思います
2. 誤飲した時の対処法を知っておこう
改めて「事故を防ぐ」という観点で身の回りを見渡してみると、小さなおもちゃや、電池といった日用品、石鹸や洗剤、タバコ…
もう全部だわ!っていうぐらい、なんでも誤飲の原因となることに気づきますね。
基本は子供が動けるようになったら、手の届くところに危険なものは置かないなどの日頃からの注意が求められます。
でも、その万が一が起こったらどうしたらいいのでしょうか。次に、この辺りを考えていきます。
2-1. 誤飲した時には「中毒110番」へSOS!!
救急車を要請する時に「119」へ電話をするということは、誰もが知っていることです。
では、洗剤や電池など飲み込んでしまったことで何らかの中毒症状を起こす恐れがある時に、的確な指示を仰ぐ場所として「中毒110番」があるのをご存知でしょうか。
●大阪中毒110番:072-727-2499(365日年中無休24時間体制)
●つくば中毒110番:029-852-9999(365日年中無休.日中9時ー21時)
●タバコ専用電話:072-726-9922(365日年中無休24時間体制.テープによる情報提供)
落ち着いて次のことを伝えます。
①年齢
②子供の大きさ(体重、身長)
③何をどれだけ誤飲したか(洗剤など物があれば、それを手元に置いて的確に説明)
今すぐできることを聞いたり、病院に行くべきかどうかなどの指示を受けることができます。
こちらは、中毒症状に特化した110番なので、的確な指示を仰げるので知っておくといいですね。
尚、この電話は「化学薬品」などの中毒症状を引き起こすと考えられる時の「誤飲時の救急電話」です。コインなどの誤飲には対応していませんのでご注意ください。
中毒症状はできるだけ早く対処することが必要ですので、どうしていいかわからない時には迷わずお問い合わせされることをお勧めします。
2-2. 誤飲したもの別の対処法
では、次にご家庭でできる対処法を考えていきましょう。
一言に誤飲といっても、例えば2.3日したら便として排泄されるものから、吐き出させたほうがいいもの、そうでないものなど、飲み込んでしまったものによって対応が全く違います。
今回は特に症状を悪化させやすこ、起こりやすい事故から順に見ていきたいと思います。
うちにはタバコないな、でもおじちゃんの家に行ったらあるし、よく行く公園でタバコを吸っている人を見かける。そんなところでは気をつけないと!という視点で確認して行ってくださいね。
2-2-1. タバコ
タバコの誤飲は、子供の誤飲の中で一番多い事故です。
タバコ1本(吸う前のじょうたい)にニコチンが10mg強が含まれています。
乳幼児の致死量は10−20mgと言われています。大抵は苦くて吐き出すのですが、万が一1本をを食べてしまうと致死量になると言われますので、早急な対応が必要です。
●口にくわえたり、食べた時は指を入れて掻き出します。
●タバコや吸殻を飲み込んでしまった時は、牛乳や水、水分の補給は厳禁です。(水分を含むことでニコチンが溶け出し吸収されやすくなってしまいます)
→タバコの誤飲は掻き出すか、早急に病院へ搬送することが大切です。
2-2-2. マニキュア、除光液
最近はおしゃれでマニキュアをたくさんお持ちのお母さんもいらっしゃるかと思います。
並べているだけで綺麗ですが、化粧品の中でももっとも毒性が高いと言われるので注意が必要です。
→無理に吐かせず、実物を持ってすぐに医療機関に受診します。
→揮発性の匂いで気分が悪くなることもあるので、蓋を開けた時は外に連れ出すなどして、換気をします。
2-2-3. ボタン電池
おもちゃのために身近な場所に置いて置いたり、タンスの隅っこに知らないうちに落ちていたりと、小さいがために、大人が気づかず、子供が口に持っていくことがあります。
そのまま便として排泄されることもありますが、胃や腸に1時間とどまってしまうと、腐敗してアルカリが漏れ出してきて潰瘍を起こすと言われ、早急な対応が必要です。
→おもちゃの電池を外して遊んでいたところを見つけて、電池が見当たらない時など、飲んだかどうだかわからない時も念のため受診する
→飲んでしまったら、同じ種類の電池か、その電池を使っていたおもちゃなどを持参して医療機関を受診する。
2-2-4. 薬
えーこれは飲まないでしょ。
そう思われる方もいるかもしれませんが、実は結構多いのがお薬。
お母さんやお父さんに処方されたお薬、カプセルのお薬は手に届くところにあると、プチン プチンと出すのも楽しい→ちょっと舐めてみよう…
気付いた時にはラムネを食べるかのように食べてしまっていたということも起こり得ます。
今のお薬はラムネのように噛んでも苦くなかったり、逆に香料がついて美味しい香りがするものもありますよね。色もカラフルで興味を引きます。
しかも味があるものだけを避けておけばいいのか?といわれたらそうでもなく、実は私の友人のお子さんが3歳の時、引き出しから正露丸を取り出して食べていた!といったことも起こっています。
「え?あの正露丸??」
大人だと近づくだけでも独特の匂いで嫌だなぁって方もいると思うのですが、なぜだかお母さんが気付いた時には手が真っ黒。そこら中に正露丸が転がっていて、回収しても瓶の半分ほど見当たらなかったそうです。
もともとどれぐらい残っていたかも定かではないとのことでしたが、とにかく救急へ!
と大騒ぎになりました。
大人用お薬で怖いのが、1粒あたりの作用が大人を対象にしているため強く出ることと、そして副作用も強く出てしまうことです。
出せるものは吐き出させ、医師の診察を受けます。
→吐き出せるものは吐き出させる
→薬の瓶を持って医療機関へ(飲んだ量などをできるだけ把握していく)
2-2-5. 硬貨
お釣りが溜まったからテーブルの上に置いておいた。貯金箱を子供が見つけてしまった。実はコインの誤飲もたくさん起こっています。
消費者庁に寄せられた実際に起こった事故をご紹介します。
「自宅で子どもが、キッチンのカウンターの上にあった100円玉を誤飲。レントゲンで食道上部に異物を発見し、100円玉を摘出。」(1歳)
「自宅で子どもが自力で財布を開けて小銭を飲み込んでしまった。レントゲンで食道上部に異物を発見し、1円玉2枚を摘出。」(0歳)
硬貨はキラキラしていて綺麗に見え、口に持っていきやすくなります。
飲み込んでしまうと途中で詰まってしまったり、無理に吐き出させようとして食道が傷ついてしまうこともあります。
→ 無理に吐き出させないで速やかに医療機関を受診します。
2-2-6. 洗剤
こちらも、最近耳にした方がいるかもしれませんが、お洗濯用の洗剤で丸いジェル状になった「ジェルボール」を誤飲する事故が増えています。
基本洗面所などは小さなもの、洗剤など危険なものがたくさんおいてあります。子供は近づかせないように戸をしっかり閉めておいたり、危険なものは1m以上の高さにしまっておくなど整頓が大切です。
もしなめてたり、飲んだりした時は慌てず対処します。
→基本的に毒性は低いとされ、舐めたり一口飲んでしまったぐらいでは様子を見れることがほとんどです。水などを飲ませて様子を見ます。
→漂白剤など刺激の強いもの、口のただれなどがある時は医療機関へ受診します。
→日本石鹸洗剤工業会のHPでは、石鹸や洗剤の誤飲時の対応が詳しく記載されていますので、参考にされてもいいでしょう。
3. 誤飲チェッカーで危ないものを探せ!
では最後に、子供は何でも口に持っていく。という特性を知った上で、事前に危険なものを取り除くという配慮を考えます。
3-1.「誤飲チェッカー」で確認をする
この時使えるのが「誤飲チェッカー」と言われるものです。
3歳の子供の一番大きく開けた口の大きさが39mm、そして喉の奥までの長さが51mm。これをカップで再現しています。
この中に入ってしまうものは誤嚥したり、窒息する恐れがあるという見方をして、事前に危ないものを排除していきます。
■誤飲チェッカー 誤飲・窒息防止教材
■定価 1個500円(税別)■透明アクリル製
鍵や電池、ヘアピンなども簡単に口の中に入ってしまうということがわかりますね。
3-2. トイレットペーパーの芯で「誤飲チェッカー」を作る
次に、お家にあるもので簡単に代用できたら…という方のために簡易版誤飲チェッカーもここでご紹介していきます。
用意するものはおトイレにある…使い終わった「トイレットペーパーの芯」です。
標準的なトイレットペーパーの芯は直径が 38mm±1mm!
先ほどの誤飲チェッカーと同じで、3歳の子供の標準的な口を大きく開けた大きさとほぼ同じサイズなんですね。
奥行きまでは測れませんので、これより大きくても角度を変えたら入ってしまったり、喉に詰めたりするものもあるので注意は必要ですが、これは一定の目安にはなります。
この中に入るもの、例えば飴玉だったり、小さなおもちゃ、お薬…少し大きなお手玉はどうかな?身近なものを手にとってここが通ってしまうものは誤飲や窒息の恐れがあるということを知ってください。
月齢が大きくなればなるほど、手先が器用になってブロックやおままごとの細々としたおもちゃが増えていきます。
特に上にお姉ちゃんやお兄ちゃんがいるご家庭では、赤ちゃんが生まれたら一旦引き上げたり、遊ぶ時にお母さんの目の届く範囲で出してあげたり、またお姉ちゃんたちとも「赤ちゃんがいる場所では遊ばない」と言った決まりを作って行くことが大切なのかなと思います。
4. まとめ
みなさん、おうちにあるもので危険なもの見つかりましたでしょうか。
どのご家庭でも今まで普通に使っていたものが、実は何かのきっかけで危険なものに変わるということがわかっていただけたかなと思います。
子育てをしながら家中をピカピカに!そうはしたいけれど、忙しくってできないのが現状です。
はいはいを始めたら、次は何の拍子につかまり立ちをするかわかりませんよね。
「つかまり立ちができる」ってことは今までの「倍以上の高さにてが届く」ということです。引き出しだっていつか開けれるようになります。
トイレットペーパーの芯が余ったら、1本は「誤飲チェッカー」として活用させたり、おもちゃを買ったりする時も、一つ一つのパーツの大きさが口に入らないかな?
そんな視点も持って見ていただき、子供の周りにあるものを見直してみてくださいね。
そして万が一、何かを口に入れてしまったときには「吐かせていいのかダメなのか」「様子を見ていいのかすぐに病院か」その辺りを考えて動いてください。
頭の片隅に「中毒110番」があったな。そう知っているだけで、とっさの時には的確な動きができると思います。
お家の電話の前にかかりつけ病院と一緒に中毒110番も書いて、貼っておくのもいいかもしれませんね。
私たちが日頃関わっている0.1.2歳の子供達。かわいい姿と行動にはまだまだ危なっかしい部分、大人が注意していかなくてはいけない側面があります。
これからも、子育て合間にちょっと考えられるようなコラムを書いていきますね。
一緒に子供達の育ちを健康に、安全に育んでいけたらいいなぁって思います。
おうち子ども教室♡いちご組
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