こんにちは。看護師 飯田です。
生活のほとんどを室内で過ごす赤ちゃん。家庭内での乳幼児の事故で一番多いもの、なんだか知っていますか?「やけど」なんです。
痛いだけでなく痕が残ることもありますし、程度によっては命に関わることもある怖い事故です。
新しい世界に生きる赤ちゃんや子供たちにとって、毎日、毎日が「これなんだろう?」と発見と驚きの連続ですね。大人だったら明らかに触らないキッチンの「火」だって、怖さを知らない赤ちゃんにとっては「綺麗なもの」に見えるから触ってしまうのです。
今回は親になったら知っていてほしい「やけど」について、まずは予防できることをご家庭で見直してもらったり、それでも「なってしまった時」にできるだけ慌てず動けるように あらかじめ知っておいてほしい対処の方法についてお話ししていきたいと思います。
目次
1.予防できることを見直してみよう
家庭の中でも特にやけどの事故が起こりやすい場所が「キッチンとリビング」です。
予防する時には「赤ちゃんの気持ちになってみる」…大人では日常・当たり前なことでも、赤ちゃんにとっては日常ではない。この視点を再確認する事が何より大切です。
これを赤ちゃんの発達の時期によって見て行くと より予防しやすくなるので見ていきたいと思います。
1-1.ねんね以降の赤ちゃん
ねんね時期の赤ちゃんは自分で動くことができないので 動き回って自分から近づいてやけどをするということはほぼ起こりません。逆に動かないからこそのやけどに注意が必要です
ホットカーペット、こたつなどの低温やけど
寒い日など大人でもついついホットカーペットの上でうたた寝ってことありますね。でも、寝返りを打てない赤ちゃんにとってこれは危険です。気持ちの良いと感じる40度程度のものに長時間皮膚が接することで起こります。
気づいた時は「赤くなってるな』ぐらいなのですが、そのうちヒリヒリと痛んで泣き出したり1日経った後ぐらいから水ぶくれができてしまいます。ゆっくり温度が皮膚の深いところにまで到達するので 赤ちゃんや子どもには気付きにくく、気づいた時にはやけどしている。という状態になってしまいます
もしこたつなど寝入ってしまったら電源を切って室温や掛物で温度調整をしましょう。
1-2.寝返り以降の動き出した赤ちゃん
この時期は「昨日できなかったことが今日はできる」と成長が目覚まし時期です。たかが寝返りと思っても、寝返りでゴロゴロ進んで移動することもできます。
手で掴む、なんでも舐めるといった時期でもあるので赤ちゃんのいるお部屋全体を見回すことが必要です。
ミルク、離乳食
急いで作ったミルクを机の上にポンとおいてちょっと違うことをしている間に触ってしまった、口に持っていってしまった。といったやけどが起こります。
飲んだり食べる直前まで赤ちゃんの目と手が届かない場所に置くこと、ミルクはおかあさんの肌を使って温度を確認したり、一口味見をして温度も確認してから食べさせましょう。
調理中
首が座った後、寝ない赤ちゃんをおんぶすると家事は一気にはかどります。ただ、これがキッチンの場合は要注意。
基本はキッチンには入れないように柵などで対策をすることが一番ですが、構造上できない時や、抱っこやおんぶをしなければならない時は念には念を押しながら家事をするぐらいが調度いいと思ってください。
おんぶをするとお母さんの後ろにいる赤ちゃんが、お母さんの反対側にある家電に触れてしまうことがあります。「後ろに赤ちゃんがいる」という視点で家具や家電の配置を変えましょう。
また、おんぶで寝てしまったからといって安心せず、火の正面に立たない工夫などして、赤ちゃんの手や足が伸びてくるところに危険なものがないかを常に注意しましょう。また、寝たことを確認できたらお布団に移動させましょう。
アイロンや炊飯器の蒸気
ご飯が炊けてくると炊飯器から水蒸気が出てきます。優しく揺れる煙に興味を持つ赤ちゃん、ちょっと触って大やけどってことがあります。これは電気ポットなどの水蒸気も同じです。
壁際に寄せたり、高さを確認してつかまり立ちが急にできるようになっても届かない、触れない場所に置きましょう。
アイロンも同じです。かけ終わった後でもしばらくは高温になっています。使用は赤ちゃんが寝ている間にして、終わったらカバーをかけて棚の中などの定位置にすぐにしまう。などの対応を考えます。
電気コード
触る・舐めるが始まった赤ちゃんは要注意です。電流のやけどはお口の中や歯茎もけがをします。出しっぱなしのコードがないか注意します。
また、電気ポットなどの電気コードを床近くのコンセントに指しているとそれを触って電気のやけどをしたり、上からポットが落ちてきてお湯をかぶるやけどが起こります。
電気コードは配線を目立たなくする、できるだけ手の届かないところにさすようにします。
テーブルクロス
クロスを引っ張ってテーブルに置いてあったおうどんを頭からかぶって大やけどしてしまったお子さんが救急で運ばれてきたことがありました。上から落ちてくると怪我にもなりますし、熱湯が全身にかかり大やけどになることがあります。
ストーブ
ストーブなど暖房器具は赤ちゃんがつかまり立ちするのにちょうど良いた高さだったり、スイッチなど赤ちゃんの好きなものが手に届くところについていますので興味を持つことが多いです。
温風に当たり続けてやけどしたり、石油ストーブなどは上においているやかんがこぼれたりやけどするだけでなく、倒れて火事になる危険もあります。
小さなうちはできるだけ石油ストーブの使用を避けましょう。(特に実家などに帰省する際は前もって赤ちゃんの入るお部屋には置かないで。などを共通認識として確認しておくのも良いでしょう)
1−3.歩き出した赤ちゃん〜子ども
リビングからお風呂、ベランダへと自由に動けるようになると、危険な範囲も広がります。目を離さないことはもちろんですが やけど以外の事故も合わせて子どもの行動範囲を見直していきます。
お風呂
浴槽の蓋の上に登ろうとして転落したり、熱湯をかぶってやけどをすることがあります。またシャワーの蛇口や温度設定を自由に触ってしまい大やけどに繋がることもあります。
お風呂を沸かしている時は特に目を離さず、脱衣場、お風呂場と2重にしっかり戸を閉めておくことも必要です。また、入浴中はお風呂用チェアに座らせて危険なものに手が届かない状況を作ることも大切です。
マンホールの蓋、マンションのベランダ非常用避難はしごの蓋
特に夏場はステンレス・鉄製のものが非常に高温になっていることがあります。ベランダプールをしていて裸足で避難はしごの蓋の上を歩いてしまったり、お外でヨチヨチ歩いて こけたのがマンホールの上だった時に手や体をやけどをすることがあります。
ベランダでそういった場所がある時は上に人工芝をひいたり、お外を歩く時もそんなことがあるんだという認識をもって手を繋ぐなど気にしながら歩くだけでも随分事故は防げます。
車のボンネット、マフラー
車やバイクのマフラーはエンジンを切ってもしばらくとても高温になっています。車から降りたらすぐにベビーカーに乗せて安全な場所に移動するなどの対策をしましょう
2.やけどの程度の見分け方
やけどと言っても 数日で治るものから命の危険にさらされるものまで様々です。
重症度の見分けるにはやけどの深さと面積、顔や陰部など特殊な場所ではないか、化学薬品によるやけどなど特殊な原因ではないかということを知ることが大切です。
2−1.やけどの範囲を知る
特に乳幼児の場合の大きさは個人差が大きい為「少しの範囲」の解釈が人によって違うことがあり、重症なやけどを見逃すことがあるので、下記の方法で確認すると良いでしょう
2−1−1.手のひらで見当をつける「手掌法」
身体全体のどれぐらいの範囲をやけどしているか見る方法が「手掌法」です。点在したやけどの範囲を確認するときにも使えます。
やけどをした本人の手の平の大きさを体の1%相当として範囲を見ます。(手のひら2つ分の広さをやけどしていたら体の2%相当をやけどしたことになります。)
2−1−2.乳幼児は『5の法則』で範囲(面積)を知る
身体のそれぞれの部位の範囲(面積)を体表面積の5の倍数%に相当するとしてやけどの範囲(面積)を計算する方法です
乳児:身体を顔、お腹、背中、右手•左手、右足•左足の6箇所に分けて 何%受傷したかを見ます。
例えばお腹全体をやけどしていたら20%の範囲をやけどしていたと見ます。
幼児:乳児と同じく身体を6箇所に分けて何%受傷したかを見ます。
右手と右足を受傷していたら10%+15%で25%受傷していることになります。
2−2、やけどの程度(深さ)
皮膚は外側から大きく表皮・真皮・皮下組織の3構造にできています。皮膚のどの深さまでやけどが及んでいるかでその程度を見ます。
2−2−1.熱傷1度
表皮のやけどです。皮膚が赤くなりヒリヒリ痛みます。
2−2−2.熱傷2度
真皮までのやけどです。赤くなった後、水疱ができます。強い痛みと熱感があります。2度の中でもより深い場所まで受傷したときは痛みを感じない時もあります。
2−2−3.熱傷3度
皮下組織までの深いやけどです。皮膚が白くなったり、茶色に変色することもあります。全身状態も悪くなり意識をなくすことや、痛さを感じなくなる重度のやけどです。
3.状況によって違う処置法
3−1.病院に行くのはどんな時?どうやって行く?
やけどの程度によっては家庭の手当てで様子をみれるもの、病院を受診するものとに分かれます。また病院に行く時も応急手当てをしてから受診することになるのでその方法も見てみましょう。
3−1−1.特殊な場所や 特殊な原因で起こったやけど
特殊な場所(顔:目の周りや耳等、陰部等)をやけどした場合や 特殊な原因(化学薬品を触った、電熱線に触れた)でやけどした場合は程度や範囲に関係なくすぐに病院にいきます。
化学薬品を触った場合は可能であればその容器なども持参します。
3−1−2.やけどの範囲(面積)で考える
手掌法や5の法則で身体の10%以上の広さをやけどした時は受診します。10%以上は脱水や全身状態の悪化を招きます。
シャワーで長時間身体を冷やすと低体温症になることがあります。お腹など範囲が広い場合は救急車が来るまでシャワーをかけて待ちます。時間がかかるときは濡れたタオルでやけどした部分を覆い、体温が奪われないように注意します。
衣服は無理に脱がせると皮膚を痛めることがあるので、服や靴下の上から水を流します。やけどは空気に触れると痛みむので濡れたタオルなどで覆って空気に触れないようにします。
水疱ができている場合も潰さないように濡れた綺麗なタオルなどで多い受診します。
3−1−3.やけどの程度で考える
熱傷2度の水疱形成があったら病院へ、熱傷3度以上や範囲が広く ぐったりしているときは救急車を要請します。方法は先ほどと同じで部位を冷やし対処します。
3−2.家で跡を残さない対処法
家で対応できるのは熱傷1度でやけどの範囲が体全体の10%未満の場合です。やけどをしたら水道水で流すが鉄則です。
できれば綺麗な洗面器などに水を張り、その中にやけどをした手先や足先をつけます。水道水は少しづつ洗面器に流し続け、水流で皮膚を傷つけないようにします。
洗面器につけることが難しい場合も、水道水を少しづつ受傷した部位に流し最低でも30分冷やします。早い段階で水道水で流し続けることや、熱傷2度ではプラス早めの受診でほとんどの場合が跡を残さず治すことができます。
3−3.やってはいけないこと
おばあちゃん世代の人が「アロエ」を塗って治すなどの 昔からの知恵を伝授してくれることがありますが、傷口からの感染の危険がありますのでやめてください。
最近モイストヒーリングと言って傷口をラップで覆ったりワセリンで空気に触れないようにする治療があります。こう言った治療を希望するときは家庭の判断ではなく、受診して医師の指導を受け正しい方法で処置をします。
消毒も家庭ではしません。消毒が必要な水疱の破れなどは病院に行き、処置してもらいます。自己判断で対処しないことが感染を防ぎ、跡を残さずに治すために重要です。
4.まとめ
小さな子供のやけどは、大人ならこんなことで?と言った日常の中に原因があることがほとんどです。
赤ちゃんが生まれたら家の中を整え、一歩先を行く予防対策を考えましょう。
やけどしたときは早い判断、処置が重症化を防いだり、跡を残さず治すために必要です。
熱傷1度で体の10%以下の範囲のやけどは基本的に「水道水」で冷やすことが大切です。体は温め、やけどの部分だけを冷やします。
水疱ができたときは自己判断することなく小児科や皮膚科を受診します。夜間や休日は小児を扱う救急病院をあらかじめ調べておくことも必要ですね。
病院は普段鼻水や熱が出た時だけでなく、このように不慮の事故などでかかる場合もありますので、普段から救急外来の病院などを調べておくことも大切だと思います。
おうち子ども教室♡いちご組
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