こんにちは。看護師の飯田です。
小さな子供は冒険家♪
はいはいが始まり、あんよをし、歩いたりジャンプしたりの成長は、子供ただって嬉しくって、つい気持ちが先走ってしまうものです。
それにしても、毎日小さなお子さんと接していると、あっちでこけた!あっちで押された!あっちでぶつかった!と、よく小さな事故が起こります。
その度に「あーん」と泣く子供たちの声。
お母さんや保育士に抱き上げられ 落ち着いて…静かになるのかな?って思ったのもつかの間。
すっかりごきげんが戻った子供は、また元気に冒険に出かけます。
怖いもの知らずの冒険家たちはずんずん、ずんずん前進あるのみですね。今回は、こんな小さな冒険家たちのあるある姿♪
こけたり、ぶつかったりでできる頭の打撲「たんこぶ」
どこまでが大丈夫で、どこからは病院に行ったらいいのか?などのお手当について、これまで見て来た「こんなことあったよ」も交えてお話ししていきます。
目次
1. 頭の打撲と「たんこぶ」
頭が体の司令塔のような働きをしていること、大切な臓器であることは、皆さんご存知だと思います。「脳みそ」と言われる頭の中の臓器は頭蓋骨という硬い骨で守られています。
けれど、何らかの原因でその大事な「脳みそ」が詰まった頭を打ってしまった時に、見て見るとぽっこりと盛り上がった「たんこぶ」ができていることがありますね。
これは危険のサイン?それとも??この状態がどう言った状態なのかから見ていきましょう。
1−1. 硬いたんこぶ
頭を打ったところをよく見ると赤いポツポツができたり、その場所が硬く腫れていることがあります。
これが「たんこぶ」医学用語では皮下血腫(皮下にできた血の塊)と言います。
皮下組織の中には小さな血管がたくさんあってそこが切れてポツポツと赤い発疹ができます。また、出血が増える塊になって「たんこぶ」になるのです。
よく聞く「たんこぶがあるから大丈夫」はちょっと違うことに気づきますね。そうなんです、たんこぶある。なし。では「たんこぶがなくって赤くなっただけ」って方が大丈夫度は上。
「赤くなっただけでよかったね。いつもと変わらず元気だし、たんこぶもできていない。」の方が正しいのです。
たんこぶがあるということは毛細血管レベルの出血があったということ。なので、大きなたんこぶはそれだけ強い打ち方をしていたということですね。
骨折していたり、もっと中で出血をしていることもありますので、病院にいくことをお勧めします。
1-2. ぶよぶよ たんこぶ
硬いたんこぶは自分が大人になるまでにも何度か経験したことがある方もいますが、「ぶよぶよしてるたんこぶもあるの?」
腫れているのに硬くない、どうなってしまったんだろうと、不安になるお母さんがたくさんいますが、こちらも大丈夫なことがほとんどです。
なぜぶよぶよしているか?
これは打ったことで出血した場所が先ほどの皮下血腫と違うからなのです。
こちらの「ぶよぶよたんこぶ」は医学用語で「帽状腱膜下血腫」と言います。(医学用語は漢字が続いてなんて読むんだか?ってことが多いのですが、これは「ぼうじょうけんまくかけっしゅ」と読みます。)
先ほどの皮下血腫が頭皮下の「皮下」という場所で血が固まってできたのと同じで、こちらは頭蓋骨のうえを覆っている薄い膜「帽状腱膜」と「頭蓋骨」の隙間に血が溜まっている状態を言います。
この場所は、小さな血管がたくさんあるので血は固まらずに溜まっていくため、ぶよぶよしたり、その場所が広がることもあるのです。
よく知っている「硬いたんこぶ」とは違い、広がっていくため心配されるお母さんもいますが、これも数週間あれば吸収されていき治っていきます。
心配が続くようでしたら病院に行ってCTをとって確認することもできますが、いつもと変わらず元気で、食欲も旺盛などの場合はいつも通りに過ごしても大丈夫なことがほとんどです。
2. 頭を打ったらどうしたらいいの?病院は?
走り回っているときにぶつかったり、転けたりすることで頭を防御できなかったり、また室内でも高いところから落ちたりすることで、時に命に関わる打撲となることもあります。
頭を打ったときは、まず意識があるかを確認します。
お話しができる子は、目を開けて話せるかを見ること。まだ言葉を話せない小さな子は、目があうか、大声で泣いているかなどで意識があるかを確認します。
お話しできない小さな子供でも、しばらくして「いつも通り」な表情や仕草に戻っていたら、まずは安心できると思います。
ただし、下記のような状況が見られるときはすぐに受診するか、救急車を要請しましょう。
頭の中の怪我は外から見て血が出ていなくても、中で大怪我をしている場合があります。
また、意識などははっきりしていても傷口からの出血が多い場合は、消毒などの処置が必要になりますので、小児外科、脳神経外科(小児科で対応しているところもありますので、まず問い合わせてもいいと思います)を受診してください。
2-1. 救急処置が必要なとき
□一時的でも意識をなくしたとき、お名前を呼んでも返事がない、ぼーっとしているとき
□痙攣が見られるとき
□呼吸が乱れている時(速い呼吸、浅い呼吸、苦しそうなど)
□顔の色が悪い、多量の嘔吐や嘔吐を繰り返す
2-1-1. 救急車、誰か人が来るまでにできること
□外の場合は 車などの危険がない道脇など安全な場所に静かに移動させ、寝かせる。
□大声で「誰か助けてください!」と応援を頼む。
一人は子供の側から離れず、状況を見守る人。もう一人は救急要請したり、救急車を誘導する人。と、子供の場合は特に2人以上の大人で動く方が急変に対応しやすいです。
□抱きかかえたり、揺さぶったりしない(頭の中で出血が起こっている場合さらに出血が広がります)
□落ち着いて状況を救急隊員に伝え、救急車が来るまでにできる処置を教えてもらい、時間を無駄にしない。
2-2. 頭を打った時の応急処置
頭を打って泣いたけれど、すぐに泣き止んだ。たんこぶができていない、またはあってもしばらくしたら泣き止んでいつも通りの姿に戻っている時は、お家で様子を見ます。この時のポイントを確認します。
2-1-1. 眠ってしまったら?
小さな子供は泣き疲れて眠ってしまうことがあります。頭を打って泣き疲れた後に眠ってしまった場合はそのまま静かに寝かせましょう。
ただ、途中で状態が変わる場合があります。おかあさんの目の届く場所に寝かせ、息が乱れていないか、嘔吐をしていないか観察しましょう
2-1-2. 痛い時、腫れはどうしたらいいの?
打った場所は数日痛みが続いたりすることもありますが、次第に治って行きます。
打った直後は傷口がなければ保冷シートなどで冷やしてあげると痛みや腫れが治まってきます
2-1-3. いつまで様子を見る?
頭を打ってから1日は安静で過ごしてください。次の日、いつもどおりに起きてきて元気ならば、普段通りの生活に戻って大丈夫です。
時間の経過とともに、腫れがひどくなっているときは 受診して見てもらった方が安心ですね。
3. 心の痛みをケアする
「体の痛み」は時に「心の痛み」となって出てくることがあります。こけて、シクシク泣いていた子を抱き上げたら、余計に大声で泣き出すときありますが、そんな状態です。
痛くって泣いていることもありますが、人は安心することでも、心の緊張の糸がほどけ、涙って出てくるものです。
怪我をする過程を見ていたら、どれぐらいの怪我かまずおおよその判断がつきますね。
大怪我の時はもちろん大声で助けを呼んでいいのですが、そうじゃないときは、基本は、まずお母さんが慌てないこと。
お母さんが一緒になって「○○ちゃん どうしたの?痛かったの?」とオロオロしたり、大声で抱きかかえたりすると、子供は「やっぱり、すごく大変なんだ。どうしよう」と不安が増大し、大泣きします。
また逆に、「大丈夫でしょ」ってほったらかしにされると「僕の気持ちわかってよー」と泣くことで自分の感情を出してきます。
まずは、少し冷静に、「大丈夫だよ。見せてごらん。冷やしてあげるね」と優しく抱き上げ、大丈夫なこと、安心していいことを伝えます。
もしお話しするとするなら、ちょっと落ち着いてからがいいですね。
「ゆっくりお休みしよう。ね、ママここ坂道だからゆっくり歩こうねってお話ししたでしょ。転けそうになったらおててつくんだよ」と優しく諭すようにお話しすることが大切です。
多分私もそうだし、皆さんも同じだと思いますが、小さな子だって責められると言い返したくなるし、反発してまた同じ怪我を繰り返すものです。
子供なので、頭を打つ→ひどくない打撲で済んだ→痛かった気持ちをわかってもらえる→お母さんの注意が耳に残る→少し気をつける→でもまた忘れたり、体が未発達なためにまた怪我をするということの繰り返しです。
怪我をしたとき「ほら言ったでしょ。」と怒ってもしょうがないですね。
子供は怪我から学んでいくのです。危ないこと、そして危険を回避する方法(前をよく見て歩く、外で走り出さない、こけるときは手をつくなど)は、なんども繰り返し教えていくことが大切です。
3-1. 「いたいのいたいのとんでいけ」の魔法の絵本
おでこごつんっ!として痛い経験がある、子供達にぴったりな絵本があります。
普段から読んでいると「痛い痛い」の時、すぐに魔法の言葉が出てくるはず。ここでご紹介したいと思います。
作: 山岡 ひかる 出版社: 絵本社 本体価格: ¥850 +税
この本は親子教室などでもよくご紹介するのですが、1歳ごろから幼稚園児までもがみんな、釘付けになります。
「痛いの痛いの飛んでいけー!」痛いの痛いのは一体どこへ飛んでいくのでしょう。
最後はえ?そんなおち?に、痛いこともすっかり忘れちゃてニコって笑顔になる魔法の絵本です。
思い出せば、私の子供たちも小さな頃からよく頭をぶつけては、泣いたりたんこぶを作っていました。
そして、子供が転んで泣いているときには、痛いところをよしよししながら、「痛いのどこに飛んでいけってする?」って聞いてみると…
「うーん パパ!」「えーどうしようかなぁ 赤鬼さん!」
さっきまで泣いていたことが嘘のように、はしゃぎだす子供たち。
「じゃぁ痛いの痛いの パパのところへ飛んでいけー」「赤鬼さんのところに飛んでいけー」ってイタイイタイのを飛ばしていくうちに、すっかり痛いのも忘れちゃう!なんてことを、よくやっていました。
子供って素直で単純なのもいいところ。
「誰に痛いのあげようかなぁ」なんて考え出したらもう、痛いことも忘れ、いたずらっ子の顔になり、いつもの元気マンに戻っていくんですね。
もちろんパパは「え?俺?なんで??」と悪いものを押し付けられた状況にびっくりしていますが、何度か繰り返すうちに一緒になって「あっおでこ痛!」「あっ痛いの飛んできた!」って演技をしてくれるようになりました笑。
子供が幼い日のいい思い出です。
4. 普段からの心がけ
なれない抱っこ紐に乗せようとして横から滑り落ちてしまった。まだ寝返りをしていない赤ちゃんだから大丈夫だと思って、お掃除の時にベルトをせずにベビーラックに入れていたら暴れて落ちた。
どちらも、ちょっとした不注意で起きる事故。
そしてもう一つが動き出した赤ちゃんに起こる頭の打撲です。
これはつかまり立ちをした赤ちゃんがテーブルに勢いよく頭を打ち付けたり、ヨチヨチあんよの赤ちゃんがちょっとしたことでつまずき、頭から落ちたりで起こります。
生まれた時3頭身だった赤ちゃんの身体は、1歳になっても、まだ頭が大きくバランスを崩すと頭から落ちることがたくさんあります。
小さな怪我やたんこぶは大きな怪我を予防する上でもいい経験。とはお話ししましたが、「打ち所が悪い」と、とんでもない事態に陥ることもあります。
こうならないための「普段からの心がけ」も大切ですので、一緒に考えておきましょう。
4-1. 室内の環境
お家で起こる頭の打撲にはどんなことがあるか見て見ましょう。
4-1-1. 原因
室内での怪我は家具などの端っこにぶつかることによる怪我、打撲が多いです。
また階段があるお家は階段、なくても全てがフラットになっているお家はまだまだ少ないので、小さな段差(和室の敷居)などでもつまずいてこけるっていうことがあります。
何もない場所でこけるのは大した怪我にならないことがほとんどですが、角っこは危険ですね。家具の配置、見直しも大切です。
4-1-2. 事前に防ぐお助けグッズ
今の家はほとんどがフローリングで硬い床です。子供が過ごすお部屋は和室や、ジョイントマットなどを引いて転けて大怪我にならないようにしておくと安心です。
また、テーブルの角、棚などかどが尖った場所は危険ですね。
セーフティグッズが100均や、ホームセンター、ベビーグッズを取り扱うお店にも売っていますので、用意しておきましょう。
以前、はいはいを始めた赤ちゃんが、部屋の隅に置いてあった全身鏡(姿見)に突進し、頭からぶつかって頭の打撲とガラスが刺さって大変な目にあった子が運ばれてきたこともあります。
「えっこんなものが?」ですが、起きてから焦っても遅いです。
子供が生まれたら、打撲や怪我、誤飲、やけどといろんな環境が原因で起こる事故を想定し、家全体を見直すことが大切です。
4-2. 屋外での対応
次に、お外で起こりやすい頭の打撲、どんなことが考えられるのか見ていきましょう
4-2-1. お外の原因
屋外の道はアスファルト舗装しています。また、ちょっとした段差や坂道などでつまずいて転ける、前をしっかり見ずに歩いて看板やポールにぶつかるなどの怪我があります。
また、歩き出した子供は足のサイズが3ヶ月もあれば1サイズ上がることもよくあります。つま先が曲がったまま靴を履いていると足全体で体を支えられずにバランスを崩します。
1歳を過ぎるとお母さんが自転車の前かごに乗せたり、流行りの幼児用キックバイクなどの転倒事故も多いです。
自転車ごと倒れて頭を打つこともありますし、キックバイクや三輪車をうまく操作できずに転けることもあります。
頭を守るということがわからない小さなうちは、頭から転落し、大怪我になります。
4-2-2. お外での頭の打撲のために気をつけることは?
お外に出るときは「走らない、手を繋ぐ」と言った基本のルールを教えていきましょう。
子供の目線は低いので、大人だと回避できるポールとの接触などが目の前に来てぶつかるまで気づかない。ということもよくあります。
時と場所を見て、自由に歩けるところかどうかを見分けることも大切です。
自転車などの乗り物に乗せるときは、大事な頭を保護する意味で、「サイズのあったヘルメット」を必ず装着します。
暑いからといって上にちょこんと置くだけでは意味がないですね。
これも初めて乗るとき、乗せる時に「これをしないと乗れない」というお約束を教えて、正しく装着する癖をつけておくといいと思います。
そして、靴は必ずサイズの合ったものをしっかりベルトを止めて履かせましょう。定期的に足のサイズを測って、大きすぎず 小さすぎずの歩きやすい靴を選ぶといいと思います。
4-3. 応急処置セット
お部屋にいても、お外にいてもどこかで起こる小さな事故。
では最後に、応急処置としてお家に常備しておいたり、お出かけにもつに入れておくと良いものをまとめてみましたのでご覧ください
4-3-1. 帰省やお出かけに必ず持って出たい必要品
□保険証・医療証・母子手帳 の3点セット
□熱が出たときはここ、怪我をしたときはここ、救急病院はここと、かかりつけ病院の診察券もしくは名前と連絡先を書いた紙
4-3-2. 打撲に備えてあると便利な救急セット
□絆創膏 痛い時のとっておきでキャラクターものなどを一つ持っておくのもおまじないがわりにいいですね。(通気性は良くないことが多いのでお飾り程度に)
□冷えピタなど保冷シート
□アイスノン(熱が出たときにも使えるので常時冷凍庫にストックがあると安心です)
□保冷剤 お菓子についてくる保冷剤も大きめのもの、手のひらサイズと2種類あると何かと便利です。
5. まとめ
小さな頃によくある頭の打撲。「あーまたかー」ではなく、毎回毎回、大丈夫かな?と、慌てず騒がず、観察して、適切な対応を取ってくださいね。
頭の中にはお熱を管理したり、いろんなことを考えたり、感情をコントロールしたりと人として生きていく上で大切な機能がぎっしり詰まっています。
まず、意識がしっかりしているか、そして、大きい出血や大きなたんこぶはできていないか、嘔吐をしたり、けいれんが起きていないかなど見て、救急の対応が必要か、お家で様子を見るか考えます。
様子を見る際も、最低1日は安静に、ゆっくりと過ごすようにして、さっきよりしんどそう、6時間たってもまだ吐いている。など気になることがあるときは受診します。
痛いときは冷やしたり、さすったりしながら「痛いの痛いの飛んでいけー」の言葉で子供の不安な気持ちを受け止め、心のケアも忘れずにしてあげてくださいね。
この魔法、本当に効きますので是非お試しください♡
おうち子ども教室♡いちご組
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